こんにちは。トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師資格取得中のかたさんです。
トロンボーンを初めて手に取ったのは、中学1年生の冬。
それから30年以上吹き続けていますが、基礎練習を意識的に好んでしようと思ったのは、
何と先月からでした。
まあ、今思えばですけど。
ウォームアップは、特に音大進学を決めてから今までも時間かけてしてきました。
しかし、いわゆる基礎練習というのはあまり時間かけていませんでした。
中学高校の吹奏楽部の子たちは基礎練習の大切さを顧問の先生や先輩たち、教則本から学んでいます。
一応教える事が多かったので、教えに行くと、もちろん基礎練習を一緒にしたりします。
基礎練習には色々なものがあり、どの管楽器でも共通して大切なものとして代表的なものがロングトーンです。
ぢつは、私かたさんはロングトーンの練習が大嫌いでした。
【ロングトーン】
ロングトーンの大切さは、十分に分かっています。
私の中では基礎練習などではなく、かなりの高等技術です。
漫画で例えます。
漫画家はキャラクターの顔などを描く時、その輪郭は曲線を用います。
同じ線の太さで曲線を描くためには、卓越した技術が必要です。
これは真っ直ぐの直線を描く技術が基礎になっており、その直線を曲げて柔らかな顔の輪郭を描くのです。
この線をまっすぐ書く技術が、管楽器ではロングトーンになるのです。
近現代絵画になど抽象的な表現をメインに描かれた作品には、直線や曲線を使い輪郭を描くことは多くありません。
そういう意味では、真っ直ぐの直線を描く技術は必要なさそうです。
ところが、そういう画家たちが作品の端に書く自身のサインや名前は、非常に達筆で美しいものが多いです。
その名前を見るだけで、その人の技術の高さが伺えます。
彼らは、美しい直線を描ける技術を有しているのです。
管楽器で例えるならば、この画家たちは完璧なロングトーンが出来る達者なのです。
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【ロングトーンの練習】
真っ直ぐで、均一の太さといつまでも同じ色の濃さで描かれる直線、それを意図的にカーブさせたり、太さを変え掠れ等を用いて様々な表現を漫画家はするのです。
これが管楽器で言うところのロングトーンです。
均一な音量と速度で真っ直ぐな音を出す。
それに意図的に音量や音色の変化をつけ表現に変える。
コラールなどをするには必要な技術ですね。
さて、冒頭私はロングトーン練習が嫌いだと言いました。
「よし、ロングトーンやろう」という、ロングトーンに対して好意的で能動的な意志を持ってしたことは、長い楽器人生を振り返ってもほとんどありませんでした。
よほど調子がよく、ロングトーン練習するに光明の可能性が見える時あるいはそれに興味がわいた時のみしてきたようで、毎日の練習で欠かさずしていたものではありませんでした。
でも先ほど「コラールでは必要な技術」と書きました。
「おい片山、ほんならどうやってコラール吹いとったんじゃい?」ってツッコまれますよね。
ポイントはそこ!
ロングトーン練習とロングトーンという技術を使って吹くコラールやハーモニーとの違いはなんだったのか?
【ロングトーンこそ音楽が必要だった】
ロングトーン練習は大嫌いなくせに、ブラームスやマーラーのコラールは大好き。
ソロ練習するより、運命や第九、モーツァルトのレクイエムのオケスタしたくて無理矢理先輩後輩引っ張って練習したこともありました。
この違いを考えれば、答えは簡単でした。
ロングトーンとコラールでの吹き方の違いは、それを演奏する時の意識にありました。
コラールは、単純に長い音を続けるのではなくハーモニーの進行があります。
物語を朗読する時のような音楽的フレーズがあります。
他の楽器にはない、トロンボーン独特の直線的な音色によって奏でられるハーモニーは、時には神々しさを、時には禍々しさをも生み出します。
とても人間的なハーモニー(と私は感じている)を奏でるホルンに対して、トロンボーンは良くも悪くも非人間的な部分があります。
ゆえにブラームスの交響曲では神のコラール、レクイエムなどでは死者に対しても鎮魂のハーモニーと呼ばれ、楽器もドイツ語でのトロンボーンの表記「Posaune」が示すとおり“神の楽器”とも呼ばれています。
これは、聖書の中にあるヨハネ黙示録に「第六の御使いがラッパを吹き鳴らした」と書かれており、そのラッパを表す語が「Posaune」であったことが語源としてあるようです。
話逸れましたが、こういう神々しハーモニーを作り出すところがトロンボーンの魅力で、コラールなどでしている時のロングトーンはとても楽しいです。
ロングトーン練習に足りなかったものはこれでした。
結局、ただの“長い音”を吹くのがつまらんかっただけなのです。
そこにはイメージも音楽的ストーリーも情熱もなかったんですね。
こんな事当たり前のことで、生徒たちにも伝えてきたことなのに自分は楽しんでいなかったという、人間ってのはよくわからん生き物ですね。
そこが面白いところなんですが。
【練習はイメージやストーリーで楽しむ】
音楽的方向性のない練習は、練習のための練習で実用的ではありません。
なにより、やっていて楽しくない。
楽しくない練習は苦痛でしかなく、発展性は望めないです。
私のロングトーン練習は、まさにそれだったのですね。
どんな音が出したいのかのイメージを明確にし、明確にするために自分の中で音の物語を作ってあげると、音が現実味を増し実体化してきます。
身体と自分全部を使ってその音を作ろうとし出します。
こうなれば、練習は楽しい!
これを身に染みて理解できたのが、なんとまあ、やっと先月なのです。
それは、大阪音大の先生で宝塚歌劇団オーケストラのトロンボーン奏者、山下浩生先生の合宿でした。
自身が参加者の方々にレッスンしたり、講師として参加された京響の戸澤淳さんのウォームアップを一緒に吹いたりしたことで、それぞれから音を出す時のイメージやストーリーを吸収できたからだと思います。
楽器を手にして何十年も何してたんだかと思いますが、この歳になって、またBodyChanceに入って2年も経ってからこのようなことを理解できたことは、自分の中では奇跡的なことではないかと感じています。
このブログの趣旨とは関係ないですが、出会いや気付きはどこにあるかわかりませんね。
というわけで、ホントに最近ですが「基礎練習」と呼ばれるものが楽しくなってきました。
楽しくなってくると楽しみを追求したいと思い、今まであまり気にかけなかったことにも注意がいき、テクニカルな面に対してより繊細に見る事ができています。
なので調子良いです。
先日からあるオケのリハーサルでは、ベースラインの全音符を吹く時にその意識をフルに使って吹いてます。
とても吹きやすかったです。
練習は楽しんでできると、何倍も効果的ですね。